スイッチを押すのは楽しいか否か
ある年齢の子供は、照明や家電製品などのスイッチに興味を示します。スイッチを無意味に押して反応を楽しんだり、何度も押して喜んだりしている子供の姿はよく見られます。
子供向けのおもちゃにも、スイッチを押すと音が鳴ったり光ったりするタイプのものは多く、そういうおもちゃで子供は喜んで遊びます。大人からすれば、なんでそんなことが楽しいのか分からなくても、子供とはそういうものです。
しかし、ゲームを遊んでいる時は大人も同じようなことをしているのではないでしょうか。
アクションゲームで、特に意味もなくジャンプをしたり、何もないところで剣を振ったりしたことのある人は多いはずです。これらは、子供がスイッチを押して遊ぶことの延長にあります。よく出来たゲームは、ボタンを押すだけで楽しいものです。
コンピュータから返されるフィードバック
子供がスイッチを押したり、ゲームで剣を振ったりすることが楽しいのは、それらの結果として、フィードバックが返ってくるからです。もしスイッチを押しても何も起こらなかったら、子供も興味を失うでしょう。何かが起こるから、スイッチを押すのが楽しいのです。
これは、「行動」とその「結果」を学習するために備わっている、人間の非常に根源的な欲求だと思います。
アクションゲームの場合は、剣を振った結果としてキャラクターがカッコいい動きをしたり、鋭い音が鳴ったり、目の前の敵が両断されたりします。これもまたフィードバックの一種です。
この時、剣が空振るよりも、何かを斬った手ごたえがあるほうが快感が増します。単にフィードバックがあればよいというものでもなく、フィードバックの質によって快感が増減するということです。
ゼルダの伝説シリーズの草むらなどは、まさに剣で斬って遊ぶために存在する場所です。これらの小さい快感の積み重ねで、アクションゲームは成り立っているといえます。
ボタンを押すのが楽しいゲーム
実はこれはアクションゲームに限らず、すべてのゲームに共通したことです。RPGでコマンドメニューを開くのだって、楽しくすることは可能です。
RPG作品の中には、コマンドボタンを押してからメニューが開かれるまでのタイミングをコンマ何秒の単位で調整しているものがあります。ボタンを押したら即座にメニューが開かれるのではなく、わずかに遅延したほうがメニューを開くときの快感が増す場合があるのです。
よく練られたゲームは、たとえRPGであっても、ボタンを押すこと自体が楽しくなるように工夫されています。この工夫は地味ながら、ゲーム全体の快適性に大きな影響を及ぼします。
そしてこの点は、アクションゲームにおいてはなおさら重要です。アクションゲームは、ボタンを押すタイミングやテクニックなど、ボタンを押すこと自体にフォーカスを当てた作品ジャンルなので、ボタンを押すのが楽しいかどうかは、プレイヤーのゲーム体験に直結する重要なポイントです。
もし、格闘ゲームでキャラクターのパンチが決まった時に、変な間の抜けた音がしたら、興ざめすることでしょう。
どうすればボタンを押すのが楽しくなるかは、実際に試行錯誤してみないと分からない部分が多く、言葉にしにくい部分です。視覚的な演出や気持ちよい効果音、そして何よりボタンを押した手ごたえが重要だと思います。これら「視覚」「聴覚」「触覚」は、アクションゲームの手触り的な部分を決定する3要素だと思います。
これらに手を抜かず、ボタンを押すのが楽しい作品を作っていきたいものです。