sam113のアクションゲーム研究室

おもにフリーや同人、インディーズなどでアクションゲームを作っている方に向けて、アクションゲームを作るヒントになるような情報を発信していきたいと思います。

ボスキャラを考える ~プレイヤーへの最終試験~

ボスキャラは何のためにいるのか

ゲームの最後を飾るのに欠かせない存在といえばボスキャラですが、今回はこのボスキャラについて考えたいと思います。そもそもボスキャラは何のためにいるのでしょうか。

ゲームの歴史を紐解くと、スペースインベーダーなどの最初期のゲームにはボスキャラがいないものが多く、ゲームの最後まで進んだらまた最初に戻る繰り返しの構造を持つものが多く見られました。今や定番となったボスキャラという存在も、一種の発明だったということです。

ゲーム内でのボスキャラの役割は、主に以下のようなものでしょう。

  • ゲームの難易度曲線のピーク
  • プレイヤーに与えられる目標
  • プレイヤーの技術と経験を問う「最終試験」
  • ストーリー上のクライマックス
  • 派手な演出などでインパクトを与える

裏を返せば、これらの要件を満たせばボスキャラというキャラクターは必ずしも必要ないのですが、代わりとなるアイディアがなかなか出てこない程度には優れた発明だといえます。

「最終試験」としてのボスキャラ

ここでは、ボスキャラの「最終試験」としての側面に着目してみたいと思います。

ステージクリア型のアクションゲームを想定した場合、ボスキャラに至るまでの過程でプレイヤーは様々なステージを解き、ゲームの腕前を磨くことになります。ボスキャラより前のステージが「練習問題」だとすれば、ボスキャラは「試験本番」にあたり、プレイヤーは「練習問題」で得た技術と経験を総動員してボスキャラに挑むことになります。

ここで重要なのは、「練習問題」で得た技術と経験が「試験本番」で役に立たなければ練習の意味がない、ということです。練習の意味がなかったら、プレイヤーは何のために腕前を磨いてきたのか分からなくなります。つまり過去のステージで培った技術と経験の応用でボスキャラを攻略できるのが望ましいのです。

このあたりが非常によくできているのがゼルダの伝説シリーズです。ゼルダの伝説シリーズでは、ダンジョンごとに攻略のキーとなるアイテムが登場しますが、ダンジョンの最後を締めくくるボスキャラは、ほぼ必ずそのキーアイテムを使って攻略するようになっています。ダンジョンの攻略が、そのままボスキャラの攻略の練習にもなっているのです。

作り手から見たボスキャラ

ボスキャラを設計するのは、ステージの設計とは別種の難しさがあります。通常の敵キャラとは見た目で差別化する必要があるためまずグラフィックを用意するのが難しく、プレイヤーにどのように攻略させるかを考えるゲームデザイン上の難しさもあります。
さらにボスキャラの動きを生み出すプログラムも複雑なものとなりがちなため、ボスキャラの開発作業はグラフィック・ゲームデザイン・プログラムが結びついた大変難易度の高いものとなります。

ちゃんとしたボスキャラを何体も用意するとなると、開発コストのかなりの割合がボスキャラの開発に取られることになるでしょう。

 

個人開発などでどうしてもボスキャラにコストを割けない場合は、コストを下げるための工夫が必要となります。
見た目のサイズを小さくする、AIのベースを共通化する、同じキャラをパワーアップさせつつ何度も登場させるなどです。
こうした工夫は、うまくやらないとボスキャラのインパクトを弱めたり、飽きられたりといった弊害を招きますが、工夫次第ではそれらの弊害を最小化することができます。同じキャラを再登場させる方法などは、プレイヤー側にも「覚えることが少なくて済む」というメリットがあり、決して弊害ばかりではありません。

ボスキャラはゲームの華なので力を入れたいところですが、現実的に作れるかという問題もあるのでコストと相談して作っていくと良いと思います。ただ、冒頭でも述べたようにボスキャラは必ずしも必須のものではないとも付け加えておきます。