sam113のアクションゲーム研究室

おもにフリーや同人、インディーズなどでアクションゲームを作っている方に向けて、アクションゲームを作るヒントになるような情報を発信していきたいと思います。

敵キャラクターの設計 ~ゲーム世界の住人たち~

敵キャラクターは何のためにいるのか

アクションゲームに欠かせないものといえば敵キャラです。彼らは何のためにいるのでしょうか。

スーパーマリオメーカーなどで敵キャラのいないコースを作ってみると分かるのですが、何も動くものがない世界は寂しいものです。たとえグロテスクなゾンビや無機質な機械であれ、敵キャラはゲームの世界の住人です。彼らの存在によって、ゲームの世界が生きているように感じられるのです。

それと同時に、敵キャラはプレイヤーに対して緊張を強いる存在でもあります。敵キャラが登場するとプレイヤーは緊張感を感じ、それを乗り越えることでプレイヤーは緊張感から解放されます。
こうした緊張感の波を適切に配置することはゲームを面白くする秘訣の一つで、敵キャラクターはそのために欠かせない存在です。

このように敵キャラは多面的な存在といえます。

ステージのパーツとしての敵キャラクター

古典的なアクションゲームでは、まっすぐ横に進むだけ、縦に往復するだけ、といったシンプルな動きしかしない敵キャラがほとんどでした。今でも2D作品にはこうした敵キャラが登場することがあります。

このようなタイプの敵キャラは、ゲームのステージを構成するパーツの一つといえます。何もない地面の上に、横に往復する敵を配置しただけでは簡単に飛び越えられてしまいますが、敵キャラの前後に穴を配置したり、天井を低くしたりすれば簡単には突破できなくなります。地形と敵キャラを組み合わせてステージを構成するわけです。

 

この場合の敵キャラは、プレイヤーに対して「歩いてくる敵を飛び越える」「敵に弾を命中させる」といった「小課題」を与えるための存在です。そのため敵キャラを設計する際は、プレイヤーに対してどんな「小課題」を与えるかを意識することが重要です。
もし自由に空を飛び回れるゲームなら、地面を歩いてくるだけの敵は簡単に飛び越えられるので課題として成り立ちません。そのようなゲームなら、敵キャラも単に地面を歩くのではなく、たまに飛び上がったり、弾のようなものを撃ってきたりといった工夫が必要になるでしょう。

ステージのパーツを超えて

ここまでは古典的なゲームにおける敵キャラの話でしたが、こと3D作品においては話が変わってきます。
まっすぐ横に進むだけ、縦に往復するだけ、といった敵キャラは3D空間ではいかにも作り物のように感じられて世界の表現に馴染みません。あのクリボーでさえ、スーパーマリオ3Dワールドではマリオを見つけると飛び上がって追いかけるような思考ロジックが組まれています。

 

3D作品では、敵キャラのAIが非常に重要になってきます。高度なAIが組まれた敵キャラは、3D空間でまるで生きているかのように振る舞い、世界をより現実的なものに感じさせます。
こうした敵キャラはもはやステージのパーツとは呼べず、真にゲーム世界の住人と呼べるものになります。ゲームの内容も「歩いてくる敵を飛び越える」といった単純なものではなくなり、敵のAIとの駆け引きを楽しむようなものに変化します。

逆に、3D空間であえて「歩いてくる敵を飛び越える」ようなシンプルなゲームを作る方向性も考えられますが、その場合は敵キャラの作り物っぽさを感じさせないためのデザイン上の工夫が必要になります。3Dのスーパーマリオシリーズなどは、作り物っぽさを逆手に取ったデザインがうまいと思います。

3D作品では、世界表現のあり方に応じて敵キャラのAIのレベルを調整することが重要となります。それによってゲームの内容まで変わってしまうことには注意が必要でしょう。