しっぽマリオにはなぜしっぽがあるのか
スーパーマリオブラザーズ3というゲームに、しっぽマリオというキャラクターが登場します。マリオが木の葉を取るとタヌキのしっぽが生えて、空を飛べるようになるのです。
これは驚異的なキャラクターデザインだと私は感じます。普通、空を飛ぶといったら羽根やプロペラです。しっぽで空を飛ぶなんて例はほとんど聞いたことがありません。しかし実際に遊んでみると、しっぽで空を飛ぶことに妙な説得力があり、違和感は感じられません。
もししっぽがないままマリオが空を飛んだとしたら、やはり違和感があったと思います。人間が空を飛ぶはずがないからです。それを言ったら、しっぽがあったとしても空を飛べるはずはないのですが、それが不思議なところです。このしっぽで空を飛ぶのに違和感を感じさせない技術こそが、私が驚異的だと感じるものです。
こうした「キャラクターデザインの説得力」が、今回の話のテーマです。
キャラクターデザインとアクションの関係性
ゲームの主人公のキャラクターデザインは、いわばゲームの「顔」にあたり、ゲームのビジュアルイメージを決定付ける大事な要素です。キャラクターデザインのクオリティによって、ゲームの売り上げは大きく変わることでしょう。
しかしそれと同時に考えておきたいのは、アクションゲームの場合、キャラクターデザインがゲームデザインにも影響してくるということです。分かりやすい例として、キャラクターの身体の大きさは、そのまま当たり判定の大きさとなります。
もっと深堀りすると、そのキャラクターが取る行動の「説得力」にキャラクターデザインは関わってきます。たとえば「壁にネバネバと張り付いて進むゲームを作ろう」と思ったら、普通はスライムのような壁に張り付けそうなキャラクターを主人公にすることになります。ただの人間が壁に張り付いたとしても、ネバネバとした感触を表現することは簡単ではありません。
ゲームデザインとキャラクターデザインは、どうしても切り離せない関係なのです。
人間という制約
ここで考えてみたいのは、主人公が「人間」だと決まっている場合です。人間同士のドラマを描きたい場合や、原作ありきの二次創作などでは主人公が「人間」だと初めから決まっている場合も多いでしょう。
主人公が「人間」という時点で、そのキャラクターが取れる行動には自ずと制約がかかります。
人間は普通、丸くなって転がったり、背中から針を突き出したり、身長が2倍に伸びたりしません。主人公がたとえば丸いボールのようなキャラクターなら、転がることを違和感なく表現できるのですが、下手に「人間」にそれをやらせると、激しい違和感が出るばかりか、キャラクターのイメージ崩壊にも繋がりかねません。
それでも敢えてそのようなゲームを作るなら、説得力のあるキャラクターデザインが必要となります。スーパーキノコを取ったマリオは身長が2倍に伸びますが、これはマリオというキャラクターだからこそ許されることです。マリオの持つキャラクターイメージや、適度にデフォルメ化された外見があってこそ、身長が2倍に伸びても違和感が出ないのです。
つまりは主人公を「人間」にした時点でゲームのアイディアに制限がかかり、それを乗り越えるにはキャラクターデザイン面で相応の考慮が必要になる、ということです。
キャラクターらしさの表現へ
ゲームのアイディアとキャラクターデザインがかっちりと噛み合った時、良いゲームが生まれます。そのキャラクターらしい動作を生き生きと表現したゲームは、遊んで楽しいものになるでしょう。アクションゲームにおいては、ゲームのアイディアから逆算してキャラクターをデザインするのも一つの方法です。
もっとも、そうやって作ったキャラクターのビジュアルが魅力的なものになるかは、また別の問題ですが。